一般社団法人関青年会議所 2025年度理事長所信
2025年度理事長 西村 健太
はじめに
私は青年会議所に入会して今年度で10年目になります。入会を決めたきっかけは、青年会議所OBである叔父から『大人になってからでも新たな親友と出会える場』という言葉を聞いたことでした。当初、親友ができる瞬間は幼少期や学生時代に限られるという先入観を持っていましたが、青年会議所での活動を通じて、友情とは特定の時期に限られたものではなく、共に修練し、奉仕し、挑戦する中で自然に生まれるものであると実感しました。これまでの活動の中で仕事や子育ての大変さから青年会議所活動に対する気持ちが薄れ、利己的な行動を取ってしまうこともありました。しかし、その度に先輩や同期の助けがあり、そして自身の担った事業の際には多大なご支援をいただけたことで、ここまで来ることができました。自身のことよりも他人を想い行動できる、そんな利他の心をもった人たちと私はこのまちで出会いました。私という人間を子供の頃からここまで育ててくれた関市のことを真剣に考え、より良くしたいと行動する、そんなメンバーがいる関青年会議所は今後もあり続けなければなりません。
しかし今、私は家業である解体業を通して日に日に減っていく家屋や空き家を目の当たりにする中で、このまちの人口減少を唯々危惧しています。関市は刀鍛冶が集まりまちを形成したことがその起源として有名ですが、それだけ目的意識をもった人がひとところに集まるという力は計り知れない可能性を秘めていることにほかなりません。誰かの幸福のために行動する中でひた向きに自身の成長を楽しむ。そのような明確な目的意識をもったメンバーをより多く増やすことによって、まちはさらなる発展を遂げることができると考えます。
私は子供たちがまちに対して郷土愛をもち、まちの新たな可能性を模索する若者が多く溢れる未来、そして後々には同じ志をもった同志へと昇華することを願い、これからも活動してまいります。
子供たちの健やかな成長を促すために
現代の子供たちは、急速なスマートフォンの普及によってインターネットやAI技術の利用に伴ってデジタルとの親和性が高くなる一方、実体験を伴わず安易に結果だけを得られる環境にあります。その副作用として、自身が挑戦し、その過程で得られる精神的、肉体的な成長の機会を失っています。中でも昨今の子供たちは運動能力の低下がよく各メディアで取り沙汰されていますが、気候変動の影響からくる酷暑や安全に遊べる環境が少なくなってきていることもその原因の一つと考えます。
しかしながら、私たち大人が子供を大切に育てるあまりに、あらゆる状況下における軽微な危険から遠ざけることで、結果として多くの挑戦や経験の機会を減少させていることも問題です。親世代の私たちは子供たちが大人になった時に困ることのないように、現実世界において青少年期に様々な経験を通じて、困難や逆境に立ち向かう胆力、そして他人と関わり、競い合う喜びを通して健全な心身を育ませる必要があります。
そのためにも子供たちには人間関係に必要不可欠である礼儀や礼節を養うと共に仲間と切磋琢磨し、その過程で体を鍛え、真剣勝負を体験できる環境を提供してまいります。
能動的青年の創出
住み暮らす関市は現在人口85,000人を切り、年間700~1,000人のペースで減少を続けています。一般的に人口減少によって及ぼされる影響としては小売や飲食等の生活関連サービスの縮小、行政サービスや社会インフラの老朽化、はたまた地域交通の撤退を招くことで生活利便性が著しく低下することと消防団や祭りの担い手不足からくる地域コミュニティの機能低下、空き家や空き店舗の増加により地域の魅力喪失によってさらなる人口減少を加速させる可能性があります。関市人口ビジョンにおいても人口減少が子供たちの進学や就職の影響によって都市部への流出が起きていることが指摘されています。もっとも、都市部に近いことがメリットとなるため、関市に特段の愛着がなければ、若者が利便性の高いまちに移住するのは当然のことです。
しかし、私たちはこのような事態をどれほど自分事として考えられているでしょうか。緩やかな変化は人を安心させ、少しくらいなら大丈夫だろうと油断させます。小さな変化を過小評価することは後々に取り返しのつかない事態を招くことになります。まちの問題は行政が改善するだろうと受け身で居続けるのではなく、私たち自身が今すぐ当事者意識をもって行動に移す必要があります。良い変化は徐々に積み重なっていくものです。
関市に住まう青年一人ひとりがまちの行く末を左右する唯一の存在であることに自覚と責任をもち、自分たちの手で持続可能な地域を作っていくという覚悟を芽生えさせるためにも、まちに対しての愛着や住み続ける動機となるきっかけを模索し、実践していきましょう。
潜在的な青年経済人の発掘
青年会議所は40歳までという限られた期間の中で社会奉仕を行い、仕事では経験できない様々な役職に就き、単年度制で活動を行っています。これはそれぞれのメンバーが毎年違った役を演じることであらゆる立場で自身の可能性を開発し、成長を促す個人の修練を目的としています。また、関市に対しての提言やまちおこし事業を私たちの頭で考え、作り、精査し、実行しています。しかし、現在の在籍メンバーは私が入会した当時の半分ほどになり、以前のように複合的な事業やマンパワーを必要とする事業の展開が困難な状態となっています。
この状況を打破するためにも成長の機会を求める人やまちの発展を願う人、そして未来を担う子供たちにより良い環境を提供したいと想う人たちを巻き込み、さらなる活動を行っていくことが肝要です。そのためにも、まず潜在的な青年経済人たちがどういった目的意識をもって、何にどのような変化を求めているのかを把握し、それぞれの対象者に適した接し方を学ぶことができる環境を整備する必要があります。
青年会議所の存在価値は、私たちがいかにその活動を楽しみ、好きだと思えるかにかかっています。ことわざに“好きこそものの上手なれ”とあるようにその感情こそが最も人の気持ちを動かすものです。私たちは青年会議所の活動や自身の成長を伝えるときに溢れんばかりの愛着をもって発信し、周りの人々を巻き込む求心力をもって、挑戦的に会員拡大を続けてまいります。
リーダーシップを発揮するJAYCEE
青年会議所は理念や目的、そして存在意義が定義されていますが、我々の中でもそれを正確に説明できるメンバーは数少ないのが現状です。40歳までの活動という特性上、在籍年数の長いメンバーは必然的に卒業し、会員の新陳代謝が行われます。これは青年会議所の新たな活力を生みますが、それと同時に共通認識が薄まることにもつながります。青年会議所に入会したきっかけは人それぞれあります。全メンバーが理念と目的を再認識することは、今後の関青年会議所の目指すべき方向性を明確にするために必要と考えます。そしてより強固な結束をもって、まちのため、ひいては社業においても力強いリーダーシップを発揮するメンバーを育成します。
希望に満ちた明るい豊かな社会、理想の社会の実現を心から熱望し、私たち関青年会議所メンバーが次代のリーダーとしての大きな責任を自覚すると共に、世界の新たな推進力となるべく“青年経済人とは”を学ぶ機会を提供してまいります。
結びに
関青年会議所は今年度で創立68年を迎えました。これは、まちやそこに住まう人々の想いを受け止め、ただひた向きに活動を続けてこられた先輩諸氏の軌跡であり、次代を担う私たちが責任をもって引き継ぐべき大切な歴史です。伝統芸能が時代と共に姿を変え現代のニーズに応えるように、関青年会議所は、その時代に合わせて形を進化させてきました。令和の幕開けと共に世界を襲った新型コロナは、私たちの生活から人々の接触の機会を奪い、これまでの当たり前を一変させました。しかし、その困難の中でも私たちはリモートでの会議を行い、議論を重ね、その時にできる最大限の力を尽くして事業を展開してきました。”現状維持は衰退と同じ”という言葉がありますが、青年会議所活動においてもやはり攻めの姿勢や変化に寛容な姿勢が肝心だと考えます。
この活動を続ける中では幾多もの挑戦の機会があり、その過程で困難に直面する瞬間もきっとあるでしょう。しかし、それを乗り越えた先には必ず自身の成長が待っています。そしてこの活動で培った経験は、まちをさらに活性化し、地域の未来を明るく照らす力となります。長く先の見えないトンネルのように感じる瞬間もあるかもしれませんが、物事には全て終わりがあります。最後にこれまでの道を振り返った時、称賛の拍手に包まれる中、誇らしく笑っていられるように悔いの残らない活動をしていきましょう。
青年会議所に所属する私たちだからこそできることがあります。そしてそれをこのまち、関市で行うことに大きな意味があるのです。仲間と手を携え、関市の明るい豊かな社会の実現のために、一歩また一歩と歩を進めていきましょう。